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偽証罪とは – 裁判での偽証に対する定義や罰則を弁護士が解説

今回は、特定の状況で嘘をつくことで成立する罪である偽証罪についてご紹介いたします。
偽証罪について法律の文言は抽象的です。そのため、具体的にどういうことをしたらまずいのか、その線引きがわかりづらいので、その線引きを補助してくれる判例を交えながら説明いたします。なお、本記事はあくまで刑事裁判における話であることにご注意ください。

偽証罪とは

偽証罪については「法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する」(刑法169条)と規定されております。こちらを整理すると、偽証罪は「法律により宣誓した証人」が「虚偽の陳述」をすることで成立し、起訴されて処罰される場合は「三月以上十年以下の懲役」刑を科されるということです。そして、この罪は、国家の審判作用の適正さを確保するために規定されたものです。

ところで、「法律により宣誓した証人」とはどのような人なのか、宣誓とは何だろうか等、抽象的な表現が多いためわかりづらいですよね。また、「虚偽の陳述」については、どのように虚偽と判断するのでしょう。自分の記憶のとおりに証言をするだけでいいのでしょうか。

証言した後に、証言と矛盾する事実が明らかとなった場合にどうなるのでしょうか。いったい何をもって虚偽と判断するのでしょうか。これらの不明瞭な点を以下で説明していきたいと思います。

「法律により宣誓した証人」について

まず「宣誓」とは、証人に対して嘘をつかないように約束をさせるものです(刑事訴訟法154条)。
その約束を破った場合に、偽証罪に問われるというのが平易な説明となります。そして、「証人」に被告人は含まれません。

もっとも、被告人が自己の刑事被告事件について他人に偽証を教唆した場合には、被告人にも偽証罪の教唆犯が成立します(最判昭28.10.19)。被告人の防御権は、供述拒否の限度でしか認めないべきであるという価値判断が働いたためと考えられます。また、証人の虚偽証言は、被告人の虚偽証言よりも国家の審判作用を誤らせる可能性が高いことから、そのような危険を生じさせる者(教唆した者)は罰するべきとの判断をしたとも言えます。

「虚偽の陳述」について

自分の記憶どおりに証言したはずだったのに、実は自分の記憶違いで客観的な事実と相反していたら…もしそのような場合にも偽証罪が成立するとしたならば、証言をするのに委縮してしまいますよね。また、客観的事実に反していたときに偽証罪が成立するならば、自分の証言しようとする内容が正しいかどうかの裏付けを、証人自らがしなければならないと思ってしまいますよね。安心してください。そのような不都合は実際には生じません。

「虚偽の陳述」とは、証人の記憶に反する陳述のことである(大判大3.4.29)との判例があります。そのため、証人が「AさんがVを殺した」という自分の記憶に従い、「AさんがVを殺した」と証言をすれば、証人に偽証罪は成立せず、たとえ実際にはBがVを殺していても偽証罪は成立しません。

また、BがVを殺したと周りがうわさをしており、Bが「Vを殺したかもしれない」と思っていても、証人は自分が目撃したときの記憶に従って「AさんがVを殺した」と証言をすれば、偽証罪は成立しないのです。

偽証罪の罰則

偽証罪の罰則については、「三月以上十年以下の懲役」としか記載されておりません。つまり、罰金刑や禁錮刑がなく、懲役刑が科されるということです。

懲役刑とは、受刑者を「刑事施設で拘置して所定の作業を行わせる」(刑法12条2項)というものであり、禁錮刑とは、受刑者を「刑事施設に拘置する」(刑法13条2項)ものであり規則的な労働を強制されることはありません。そのため、懲役刑が 重い刑罰であるとわかるかと思います。このように重い刑罰を規定することによって、国家の審判作用の適正さを確保するようにしています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。法定刑が重いものではあるものの、証人になる機会は人生においてそうそうあるものではないので、身になじまない話だったかと思います。しかし、もしご自分が証人になるのだとしたら、法廷で人の人生を左右しかねない証言を求められたとしたら、どうしても不安になってしまうと思います。この記事が不安を拭う一助となれば幸いです。

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