仮釈放という制度をご存知でしょうか。
たとえば、重大な刑事事件のニュース報道の中で「懲役〇年」という刑の宣告がなされても、仮釈放により刑期を満了する前に社会復帰できるという話を聞いたことのある方は多いと思います。
または、身近な方が現在服役中で「いつ出所できるのか」とその帰りを待っておられる方々も少なくないかもしれません。
本記事では、仮釈放とはどのような制度であり、どのようなときに認められるのか、近年の傾向としてどれくらい服役したら出所できるのか、などを代表弁護士・中村勉が解説いたします。
仮釈放とは
仮釈放とは、懲役刑や禁固刑に処せられた者に改悛の状(かいしゅんのじょう)があるときは、一定期間の服役の後、刑期を満了する前に、行政官庁の処分によって仮に釈放されるという制度(刑法第28条)をいいます。
仮に釈放された後、刑期が満了するまでの間は、保護観察に付されることとなり、これにより再犯を防止し、その改善更生と円滑な社会復帰を促進することが仮釈放制度の目的です。
※「改悛」は犯した悪事や過ちを悔い改め、心を入れ替えること。
仮釈放の条件(法令・規則・通達の定め)
では、仮釈放は、どのようなときに認められるのでしょうか。
仮釈放制度の出発点となる法律の定めは刑法(第28条)です。そして、この刑法の規定を具体化する規則として「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」(以下、「規則」といいます)があり、さらに、この規則の詳細を定めるものとして「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する事務の運用について(依命通達)」(以下、「通達」といいます)があります。以下、順に見ていきます。
法令の定め
仮釈放が認められるための要件は、以下の2要件です。
- 改悛の状があること
- 有期刑についてはその刑期の3分の1、無期刑については10年が経過したこと
なお、少年法には特則があり、たとえば、無期刑については7年が経過したことなどの特則が定められています(少年法第58条第1項第1号)。
(刑法)第二十八条
懲役又は禁錮に処せられた者に改悛の状があるときは、有期刑についてはその刑期の三分の一を、無期刑については十年を経過した後、行政官庁の処分によって仮に釈放することができる。
(少年法)第五十八条
少年のとき懲役又は禁錮の言渡しを受けた者については、次の期間を経過した後、仮釈放をすることができる。
一 無期刑については七年
二 第五十一条第二項の規定により言い渡した有期の刑については、その刑期の三分の一
三 第五十二条第一項又は同条第一項及び第二項の規定により言い渡した刑については、その刑の短期の三分の一
2 第五十一条第一項の規定(※筆者注:死刑の減刑)により無期刑の言渡しを受けた者については、前項第一号の規定は適用しない。
規則の定め
では、刑法にある「改悛の状」はどのようなことをいうのでしょうか。
これを具体化しているのが以下の規則になります。規則では「改悛の状」をさらに4つの要素で説明しています。
- 悔悟の情及び改善更生の意欲があること
- 再び犯罪をするおそれがないこと
- 保護観察に付することが改善更生のために相当であること
- ただし社会の感情がこれを是認すると認められないときはこの限りではないこと
仮釈放許可の基準
(規則)第二十八条
法第三十九条第一項に規定する仮釈放を許す処分は、懲役又は禁錮の刑の執行のため刑事施設又は少年院に収容されている者について、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認めるときにするものとする。ただし、社会の感情がこれを是認すると認められないときは、この限りでない。
通達の定め
上記1~4の規則の条件を見ても、どのようなときにこれらの条件を満たすのか、はっきりとわからない部分があります。
これらの条件は、全て必要なのでしょうか。また、具体的にどのような場合にこれらの条件を満たすといえるのでしょうか。
このような条件の詳細を定めているのが以下の「通達」になります。
通達では、1~4の条件は全てを満たすことが求められることや、中心的な要件は「1. 悔悟の情及び改善更生の意欲があること」であることなどが記載されています。
個別の条件については、たとえば、「悔悟の情」を判断するときは受刑者の発言や文言のみで判断しないこと、「改善更生の意欲」を判断するときは被害者等に対する慰謝の措置の有無・内容や、その措置の計画・準備の有無・内容などを考慮することが記されています。
また、「2. 再び犯罪をするおそれ」については、性格・年齢・経歴・心身の状況、犯罪の罪質・動機・態様・結果・社会に与えた影響、施設での処遇の経過などから判断することとされています。
そして、「3. 保護観察に付することが改善更生のために相当」であるかは、「1. 悔悟の情及び改善更生の意欲があること」及び「2. 再び犯罪をするおそれがないこと」を満たす場合に、総合的かつ最終的に実質的に相当であるかを判断することとされています。
もっとも、「4. 社会の感情」として、被害者・ご遺族等の感情、地域社会の住民の感情、裁判官又は検察官から表明されている意見も考慮すべきことが定められています。
(通達)7 仮釈放許可基準の適用
(1) 規則第28条に定める基準に該当するかどうかを判断するに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 規則第28条は、悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められること、再び犯罪をするおそれがないと認められること、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められること並びに社会の感情 が仮釈放を是認すると認められることの4つの要件を掲げており、仮釈放を許すにはこれらのいずれもが満たされることが必要であるとされていること。
イ アの4つの要件のうち、悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められることは、仮釈放を許すことの中心的な要件であり、これが認められるかどうかが、他の要件に先立って、判断されるべきであること。
ウ 悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められる審理対象者について、再び犯罪をするおそれがないと認められるかどうかが判断されるべきであること。この場合において、悔悟の情及び改善更生の意欲があると認められることは、通常、再び犯罪をするおそれがないことを推認させることになるが、審理対象者の性格、年齢、経歴、心身の状況その他の事情を考慮したときに、なおこれが認められるかどうかが判断されるべきであること。
エ 保護観察に付することが改善更生のために相当であることは、仮釈放を許すことの包括的な要件であると考えられ、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがないと認められる審理対象者について、これが認められるかどうかが判断されるべきであること。この場合において、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがないと認められることは、通常、保護観察に付することが改善更生のために相当であることを推認させることになるが、総合的かつ最終的に実質的相当性を判断する観点から、なおこれが認められるかどうかが判断されるべきであること。
オ 社会の感情が仮釈放を是認するかどうかは、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められる審理対象者について判断されるべきであること。この場合において、悔悟の情及び改善更生の意欲があり、再び犯罪をするおそれがなく、かつ、保護観察に付することが改善更生のために相当であると認められることは、通常、社会の感情が仮釈放を是認することを推認させるが、なおも仮釈放を許すことが刑罰制度の原理及び機能を害しないかどうかを最終的に改めて確認する観点から、なおこれが認められるかどうかが判断されるべきであること。
(2) (1)のイにより悔悟の情及び改善更生の意欲があるかどうかを判断するに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 悔悟の情があると認められるためには、審理対象者が審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪による被害の実情及び当該犯罪に至った自己の問題性を正しく認識していることを前提とし、その上で悔いる気持ちが認められることが必要であること。
イ アの悔いる気持ちが特に強く認められるときは、その旨の評価をすること。
ウ アに掲げる事項を考慮するに当たっては、面接における審理対象者による悔悟を表す発言及び申告票又は6の(3)のエの書面(以下「申告票等」という)に記載された悔悟を表す文言のみならず、審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪による被害の実情についての認識、当該犯罪に至った自己の問題性についての認識及び当該犯罪を悔いる気持ちの表れと認められる言動その他の事項を考慮し、当該悔悟を表す発言又は文言が真しな気持ちに基づくものであるかどうかを証明することとなる客観的事実を把握すべきであること。
エ 改善更生の意欲があると認められるためには、審理対象者が審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪による被害者等に対してどのように償うべきかを正しく認識し、かつ、償いをする気持ちがあることを前提とし、その上で再び犯罪をしないためにどのような生活を送るべきかを正しく認識し、かつ、過去の生活を改め健全な生活を送る気持ちが認められることが必要であること。
オ エの償いをする気持ち又は過去の生活を改め健全な生活を送る気持ちが特に強く認められるときは、その旨の評価をすること。
カ エに掲げる事項を考慮するに当たっては、次に掲げる事項その他の事項を考慮し、客観的事実を把握すべきであること。
(ア)被害者等に対する慰謝の措置の有無及び内容並びに当該措置の計画及び準備の有無及び内容
(イ)刑事施設における矯正処遇又は少年院における矯正教育への取組の状況
(ウ)反則行為又は紀律に違反する行為の有無及び内容その他の刑事施設又は少年院における生活態度
(工)釈放後の生活の計画の有無及び内容その他の健全な生活を確保するための行動の有無及び内容
(3) (1)のウにより再び犯罪をするおそれがないかどうかを判断するに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 「再び犯罪をするおそれ」には、仮釈放中の再犯のおそれ及び仮釈放
期間経過後の再犯のおそれが含まれるところ、前者の意味での再犯のおそれについては、何らかの犯罪をするおそれが合理的に想定し得ない程度に至っていなければならないのに対し、後者の意味での再犯のおそれについては、再犯のおそれが相当程度現実的でなければ、この意味での再犯のおそれはないと認められるものであると考えられること。
イ 悔悟の情及び改善更生の意欲が特に強く認められたときは、再び犯罪をするおそれがないことを示すものとして、一定の評価をすること。
ウ 次に掲げる事項その他の事項を考慮すべきであること。
(ア) 性格、年齢、経歴及び心身の状況
(イ) 審理に係る刑を言い渡される理由となった犯罪の罪質、動機、態様、結果及び社会に与えた影響
(ウ) 刑事施設における矯正処遇の経過及び効果又は少年院における矯正教育の経過及び成績の推移
(工) 釈放後の生活環境
(オ) 保護観察において予定される処遇の内容及び効果
(力) 悔悟の情及び改善更生の意欲の程度
(4) (1)のエにより保護観察に付することが改善更生のために相当であるかどうかの判断に当たっては、次に掲げる事項その他の事項を考慮するものとする。
ア 刑事施設又は少年院において予定される処遇の内容及び効果
イ (2)のウ及び力並びに(3)のウに掲げる事項
(5) (1)のオにより社会の感情が仮釈放を是認するかどうかを判断するに当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
ア 被害者等や地域社会の住民の具体的な感情は、重要な考慮要素となるものの、「社会の感情」 とは、それらの感情そのものではなく、刑罰制度の原理・機能という観点から見た抽象的・観念的なものであることに 留意して判断を行うこと。
イ 次に掲げる事項その他の事項を考慮すべきであること。
(ア) 被害者等の感情
(イ) (ア)に掲げるもののほか、収容期間及び仮釈放を許すかどうかに関する関係人及び地域社会の住民の感情
(ウ) 裁判官又は検察官から表明されている意見
(工) (2)のウ及び力、(3)のウ並びに(4)のアに掲げる事項
仮釈放の判断機関
仮釈放を許すかどうかを判断する機関は、地方更生保護委員会です(以下「地方委員会」といいます)。この地方委員会は、高等裁判所の所在地に対応して、全国8カ所に設置されています。地方委員会は、刑事施設の長などからの申出(更生保護法第34条第1項)又は自らの判断に基づいて(同法第35条第1項)審理を開始します。
地方委員会の構成員は3人であり(同法第23条第1項)、その過半数で決定がなされます(同法同条第2項)。
判断に当たっては、地方委員会の委員が直接に受刑者と面接しなければならないと定められています(同法第37条第1項)。
また、申し出がある場合には、被害者やそのご遺族の方、裁判官、検察官などの意見を考慮することとされています(同法第38条第1項、規則第22条、第10条)。
更生保護法
第二十三条 地方委員会は、次に掲げる事項については、三人の委員をもって構成する合議体で、その権限を行う。
一 この法律又は他の法律の規定により決定をもってすることとされている処分
二 第三十五条第一項(第四十二条及び売春防止法(昭和三十一年法律第百十八号)第二十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定による審理の開始に係る判断
三 第三十九条第四項(第四十二条及び売春防止法第二十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定による審理の再開に係る判断
四 第七十一条の規定による申請
2 前項の合議体の議事は、その構成員の過半数で決する。
3 第一項の合議体がその権能として行う調査は、その構成員である委員又は保護観察官をして行わせることができる。
仮釈放及び仮出場の申出
第三十四条 刑事施設の長又は少年院の長は、懲役又は禁錮の刑の執行のため収容している者について、前条の期間が経過し、かつ、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮釈放を許すべき旨の申出をしなければならない。
2 刑事施設の長は、拘留の刑の執行のため収容している者又は労役場に留置している者について、法務省令で定める基準に該当すると認めるときは、地方委員会に対し、仮出場を許すべき旨の申出をしなければならない。
申出によらない審理の開始等
第三十五条 地方委員会は、前条の申出がない場合であっても、必要があると認めるときは、仮釈放又は仮出場を許すか否かに関する審理を開始することができる。
2 地方委員会は、前項の規定により審理を開始するに当たっては、あらかじめ、審理の対象となるべき者が収容されている刑事施設(労役場に留置されている場合には、当該労役場が附置された刑事施設)の長又は少年院の長の意見を聴かなければならない。
第三十七条 地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理においては、その構成員である委員をして、審理対象者と面接させなければならない。ただし、その者の重い疾病若しくは傷害により面接を行うことが困難であると認められるとき又は法務省令で定める場合であって面接の必要がないと認められるときは、この限りでない。
2 地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理において必要があると認めるときは、審理対象者について、保護観察所の長に対し、事項を定めて、第八十二条第一項の規定による生活環境の調整を行うことを求めることができる。
3 前条第二項の規定は、仮釈放を許すか否かに関する審理における調査について準用する。
被害者等の意見等の聴取
第三十八条 地方委員会は、仮釈放を許すか否かに関する審理を行うに当たり、法務省令で定めるところにより、被害者等(審理対象者が刑を言い渡される理由となった犯罪により害を被った者(以下この項において「被害者」という。)又はその法定代理人若しくは被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。次項において同じ。)から、審理対象者の仮釈放に関する意見及び被害に関する心情(以下この条において「意見等」という。)を述べたい旨の申出があったときは、当該意見等を聴取するものとする。ただし、当該被害に係る事件の性質、審理の状況その他の事情を考慮して相当でないと認めるときは、この限りでない。
2 地方委員会は、被害者等の居住地を管轄する保護観察所の長に対し、前項の申出の受理に関する事務及び同項の意見等の聴取を円滑に実施するための事務を嘱託することができる。
参考意見の聴取等
第十条 矯正施設の長は、審査に当たり必要があると認めるときは、次に掲げる者の意見を求めるものとする。
一 審査の対象となる者の処遇に関係のある当該矯正施設(刑事施設(当該刑事施設に附置された労役場を含む。)、少年院及び婦人補導院をいう。以下同じ。)の職員以外の協力者
二 当該矯正施設の職員以外の精神医学、心理学等の専門的知識を有する者
三 裁判官又は検察官
2 矯正施設の長は、前項の場合のほか、審査に当たり、裁判官又は検察官から、当該審査の対象となる者について仮釈放等に関する意見が表明されているときは、当該意見を考慮するものとする。
3 矯正施設の長は、審査に関し必要があると認めるときは、訴訟記録を閲覧するものとする。
参考意見の聴取等
第二十二条 第十条の規定は、仮釈放等を許すか否かに関する審理について準用する。この場合において、同条第一項第一号中「当該矯正施設(刑事施設(当該刑事施設に附置された労役場を含む)、少年院及び婦人補導院をいう。以下同じ。)の職員以外の協力者」とあるのは「協力者」と、同項第二号中「当該矯正施設の職員以外の精神医学」とあるのは「精神医学」と読み替えるものとする。
仮釈放の運用
令和元年版犯罪白書によると、平成期の仮釈放者の人員は、1万2000人台から1万6000人台を推移しており、平成29年からは、仮釈放対象者に一部執行猶予者も含まれるようになり、平成30年の仮釈放者は1万2299人となりました。
満期出所者の人数と比較した仮釈放率は、平成期は概ね50%前後を推移していましたが、平成30年は58.5%(男性57.0%、女性72.0%)と平成期で最高値を記録しています。
出典:令和元年版犯罪白書
ところで、仮釈放の法令の要件は、①改悛の状があること、②有期刑についてはその刑期の3分の1、無期刑については10年が経過したこと(刑法第28条)でした。では、有期刑の3分の1や、無期刑における
10年が経過すれば、直ちに仮釈放が認められるのでしょうか。実は、単に3分の1や10年が経過しただけでは、容易には仮釈放が認められていないのが実情です。
仮釈放制度の近年の傾向(いつ仮釈放されるのか)
それでは、どのくらい服役したら仮釈放が認められるのでしょうか。全体の傾向としては、仮釈放が認められるための刑期は概して長期化していると言えます。
令和元年版犯罪白書によると、平成30年は、刑期3年以下の受刑者については、刑期の執行率(執行すべき刑期に対する出所までの執行期間の比率)90%未満で仮釈放が認められた割合が全体の3分の2以上を占めています。
これに対して、刑期3年より長く10年以下の受刑者については、半数近くの者(46%)が執行率90%となっています。さらに、10年より長期の受刑者に至っては、大半の者(87%)が執行率90%以上となっています。
また、刑期3年より長く10年以下の受刑者については、執行率80%~90%未満の者と90%以上の者を合計すると85%、10年以上の受刑者に至っては98%となります。
そもそも、刑期70%未満で仮釈放が認められる者は、いずれの刑期においても約1%前後であり、ほとんどの者が刑期70%以上を満了していることになります。以上をまとめると次のようになります。
- 刑期3年以下の場合は、刑期90%未満で仮釈放が認められる場合が多いと言えます。
- 刑期3年を超えると、大多数(85%)は刑期80%を満了して初めて仮釈放が認められており、全体の半数近く(46%)は、刑期90%以上を満了してから仮釈放が認められているといえます。
- さらに、刑期10年を超えた場合には、大多数(87%)が刑期90%以上を満了しており、刑期80%以上の者と合計するとほぼ全体(98%)を占めていることがわかります。
- 全体を通じて、刑期70%未満で仮釈放が認められる者はごく僅か(1%前後)です。
なお、無期懲役刑の受刑者については、平成元年においては、仮釈放が認められた13人中9人と大多数が服役期間20年以下でしたが、その後服役期間の長期化が進み、平成30年においては、仮釈放が認められた10人全員が服役期間30年を超えています。
出典:令和元年版犯罪白書
このように、近年の傾向としては、仮釈放が認められるのは有期刑の70%以上(無期懲役刑の場合には30年前後)を経過した後というのが実情といえます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は仮釈放制度の概要や近年の運用を説明させていただきました。
仮釈放制度は、審査対象となる受刑者の方の人生を左右することはもちろんのこと、その他の関係者の方に対しても様々な影響が考えられるため、被害者やそのご遺族の方などのご意見を伺う手続も規定されています。犯罪と更生の調和を図る仮釈放制度は、時代や社会の趨勢に応じ、このような各手続を通じて適正に運用されていくことが大切なのです。