不当逮捕と誤認逮捕の違いを弁護士が解説
警察に逮捕された被疑者やその関係者が、「不当逮捕だ!」と主張する場面を報道やドラマ等で見かけたことはありませんか。
不当逮捕というのは具体的にはどのような意味を持つのか、誤認逮捕との違いにも言及しつつ、弁護士が解説いたします。
不当逮捕とはどのような状態を指すか
「不当逮捕」とは、文字通り、逮捕が不当、ということですが、ここでの「不当」は二通りの意味が考えられます。
- 罪を犯していないのに容疑をかけられて逮捕されたために逮捕が「不当」。
- 罪を犯したこと自体はそのとおりであるものの、そのような犯罪の嫌疑以外に法律上必要とされている逮捕の要件(逮捕の必要性)を満たしていないにもかかわらず、逮捕されて「不当」
上記いずれの意味での「不当逮捕」なのかは、その主張内容によることになります。
いずれにしても逮捕が違法であるとの主張である点では変わりません。
なお、犯罪の嫌疑も逮捕の必要性も一応認められ、明確に違法とまではいえないものの、運用上このような逮捕はあり得ないといった意味で「不当逮捕」が用いられることもあります。
いずれにしても「不当逮捕」という言葉が法律上定められているわけではありません。
誤認逮捕との違いは
誤認逮捕とは、一般的に、罪を犯していないのに容疑をかけられて逮捕されてしまうことをいいます。
つまり、上述した不当逮捕の意味のうち、上記1の意味に当たり、誤認逮捕の意味で「不当逮捕」ということもあり得ます。
もっとも、一般的に上記1の場合には「誤認逮捕」ということが多いでしょう。
なお、「罪を犯していない」という場合にも、およそ二通りの意味が考えられます。
一つは、「別に真犯人がいて、自分は犯人ではない。」というように、人違いで、そもそも犯罪行為に全くもって関わっていない場合です。例えば、2012年に発生したパソコン遠隔操作事件で誤認逮捕されたパソコンの所有者等4名はこのケースにあたります。
もう一つは、「自分の物と間違えて持って帰ってきてしまったのであって、他人の物を窃取したつもりはなかった。」というように、客観的に見て窃盗という犯罪行為に当たり得る行為はしているものの、窃盗の故意を欠くために犯罪が成立しないときのように、犯罪の故意を欠くために罪を犯したことにはならない場合です。
こちらは、人の内面によって犯罪の成否が左右されることになりますので、上記の人違いのケースに比較して、誤認逮捕されることが多いと思われます。
強制わいせつや強制性交等の事件で「同意があると思っていた」という主張が逮捕された被疑者からされることがよくありますが、これも同意があると思っており、相手の意思に反してその行為をするという故意はなく、同罪は成立しない、という主張ですので、こちらの意味の誤認逮捕の主張をいえます。
もっとも、「誤認逮捕」という場合には、どちらかというと前者の人違いで逮捕されるケースをイメージされる方が多いでしょう。
誤認逮捕も、不当逮捕と同じく、法律上の言葉ではありません。
不当に逮捕された場合どうするか
1. 弁護士を呼ぶ
まずは、弁護士を呼びましょう。逮捕された本人は、警察に弁護士と接見したい旨申し出てください。
知り合いの弁護士等がいれば、弁護士名を言えば警察がその弁護士に連絡をとってくれます。
知り合いの弁護士等がいない場合には、当番弁護士を呼んでほしい旨申し出れば、警察は当番弁護士を派遣している弁護士会に連絡を入れてくれます。
当番弁護士とは、各弁護士会が運営している当番弁護士制度に基づき、希望する逮捕された人に対し、各弁護士会が無料で1回派遣する弁護士のことをいいます。逮捕された方のご家族も、逮捕された場所の弁護士会に電話をして当番弁護士の派遣を依頼することができます。
しかし、ご家族におかれては、ネット等で情報収集ができたり、法律事務所に電話や訪問して相談ができたりする状態にあるのが通常ですから、刑事事件の経験が豊富な弁護士を見つけて本人との接見に行ってもらうことを強くお勧めします。
なぜなら、当番弁護士を選ぶことはできず、普段は民事事件ばかり扱っていて刑事事件については不慣れな弁護士が派遣されることも考えられるからです。そして、特に不当逮捕であると考えられる場合には、捜査機関や勾留決定をする裁判所に対して適時に効果的な主張をしていくことが必要ですから、刑事事件に精通した弁護士にできる限り早く相談・依頼すべきです。
不当逮捕とはいえ、一度逮捕されると、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、その24時間以内に勾留請求され、裁判官により勾留決定されてしまいかねません。
勾留決定されると、検察官が勾留請求をした日からまずは10日間勾留されることとなり、この勾留期間は最大もう10日間延長される可能性があります。逮捕から数えると、最大23日間勾留されることになりかねないのです。
身柄拘束されている間は、食事や睡眠時間などは確保されていますが、もちろん携帯電話等は使えませんし、外部と自由に連絡をとることはできません。そのため、仕事や学校には行けなくなる上、身柄拘束期間が長引けば、仕事を失うリスクや単位を落とすリスクも出てきます。
逮捕の報道がされてしまえば、より失職のリスクが高くなりますし、ネット上で当該報道情報が拡散されることにより、再就職も困難になり得ます。このように罪を実際には犯していなくても、不当逮捕されてしまえば、長期間身柄が拘束され、日常生活や今後の人生に悪影響が出てくる可能性が大いにあります。
逮捕直後に弁護士に依頼すれば、検察官や裁判官宛てに不当逮捕であること等を説得的に説明する意見書を出してもらい、検察官による勾留請求を回避したり、裁判官が勾留決定することを回避したりするための身柄解放活動をしてもらうことができます。
また、勾留決定されるまでの間に逮捕されている本人と接見できるのは、基本的に弁護士に限られますので、不当逮捕され不安に思っている本人に対し、本人の味方となる弁護士をご家族から派遣することは、本人の心の支えにもなるでしょう。
そもそも罪を犯していないにもかかわらず逮捕されてしまった場合には、身柄解放活動とは別途、誤って起訴されないようにすることが重要になってきます。
誤認逮捕であるからと言って、取調べにおいて自分の言いたいことを言えばよいとは限りません。
意図せず自分の話したことが捜査機関には違う捉え方をされる可能性もあるからです。かといって、黙秘権を行使することが最善かというとそれはケースバイケースです。
速やかに弁護士をつけることで、警察や検察官との取調べでどのように受け答えをするか、黙秘するのがよいのか等につきアドバイスをもらうことができます。
また、この場合には、捜査機関において被疑者が罪を犯したものと決めてかかり、自白の強要を図ってくることも考えられますので、これに屈しないように精神状態を維持することも重要です。
弁護士が頻繁接見にくることで、被疑者も安心して、アドバイス通りに取調べに臨めるでしょう。また、弁護士に依頼することで、できる限りの証拠収集をしてもらったりすることもできます。罪を犯していないことを根拠をもって示すことができれば、その分、早く釈放されることも考えられます。
また、罪を犯したことは事実で、逮捕の必要性がないことを争っていた場合に、仮に身柄解放が上手くいかず、勾留が決定されてしまったとしても、被害者のいる犯罪でしたら、弁護士を介して被害者と示談交渉をすることができます。
被害者との間で早期に示談が成立すれば、その分早期に釈放されることも考えられます。
2. 誤った内容の供述調書には署名指印しない
捜査機関を通して弁護士を呼ぶことができても、捜査機関は弁護士が接見に来るのを待ってはくれません。
弁護士との接見前に取調べが行われた場合には、とりあえず黙秘権の行使をするのがよいでしょう。
一度話せば、取り返しがつかなくなる可能性がある一方、黙秘権を行使して後から話す分には問題がないからです。
仮に黙秘せずに話すという選択をとった場合であっても、供述調書に署名指印を求められたときには、きちんと記載内容を確認し、誤りがあれば訂正を求め、誤った内容の供述調書に署名指印することがないようにしましょう。
なぜかというと、供述調書は一度署名指印してしまうと、その調書の記載内容通りにあなたが供述したものとして扱われ、そのまま裁判で証拠として採用されてしまう可能性があるからです。
3. ふるまいには気を付ける
不当逮捕だからといって、警察官に反抗して暴力を振るったり、警察官が作成した調書を破る等してしまえば、それぞれ、公務執行妨害罪(刑法第95条)、(公用文書毀棄罪第258条)として別途現行犯逮捕されてしまいかねません。
したがって、できる限り冷静に対処し、とにかく早く弁護士を呼ぶようにしましょう。
4. 逮捕が不当であることを証明しうるものを考えらえるだけ考える
人違いによる誤認逮捕の場合には、例えば、事件現場での目撃者の有無、現場の周辺にある防犯カメラの有無、真犯人らしき人物の存在に関する情報、自分のアリバイ等です。
自分が犯人ではないことを被疑者自身が証明する責任など本来ありませんが、逮捕されてしまったからには、警察などの捜査機関から抱かれている疑いを晴らすことができない限りは身柄拘束が続いてしまいます。
また、防犯カメラの映像等は時間の経過により入手ができなくなってしまいますので、早めに保全してもらう必要があります。ですので、弁護士にも協力してもらい、可能な限り、自分に有利な証拠の確保に努めましょう。
また、故意が問題となる誤認逮捕の場合には、犯罪の故意がなかったことを示す客観的事情を考えられるだけ考えてみましょう。
罪を犯したことには間違いないが、逮捕の必要性は満たさないという場合には、身元引受人になってくれる親族や親しい友人がいないか、被害者と接触しないようにするために自分が約束できることは何か等考えておくと、弁護士との話がスムーズに進みます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。不当逮捕にはおよそ二通りあること、いずれにしても早期に弁護士に相談・依頼することが重要であることをお分かりいただけたと思います。
当事務所では、ご家族が逮捕されてしまった方につき、初回は無料で相談を承っておりますので、お気軽にご相談ください。
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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
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