近年、オークションサイトやフリマアプリ等の普及により、個人間の売買が一気に増加しました。ネットを介し個人同士でやり取りを行うのは、相手をどれほど信用してよいものか分からず何かと不安が伴いますが、これらのサイト、アプリ等においては、利用者の身分確認を厳格に行ったり、利用者の評価の機能をつけたりする等の運営会社の工夫により、比較的安心して取引ができている利用者が多いように見受けられます。
もっとも、それでもいわゆるオークション詐欺は現在においても相当数行われているのが現実です。
以下、オークション詐欺の手口やオークション詐欺に成立する犯罪等を弁護士・中村勉が解説いたします。
オークション詐欺の手口、成立し得る犯罪
オークション詐欺とは、オークションの出品から商品発送・代金支払等の過程において行われる詐欺のことを言います。売主側が詐欺を行う場合と、買主場合が詐欺を行う場合があります。
売主側によるオークション詐欺の手口としては、以下がございます。
- ①商品代金の支払いを受けたものの、商品は送らず、代金を騙し取る行為(未送付詐欺)
- ②有名ブランド品の偽物を本物として出品し、偽物を送付する行為(偽ブランド品詐欺)
- ③いわゆるサクラを利用し、または自作自演で、不当に価格を吊り上げる行為
買主側によるオークション詐欺の手口としては、以下がございます。
- ④商品を受け取ったにもかかわらず、代金を支払わない行為
- ⑤詐欺に遭いたくないなどと言い、商品を先に送らせ、その後音信不通となり代金を支払わない行為(先送り詐欺)
- ⑥真実は未払いであるにもかかわらず、代金を支払ったものと見せかけ、商品を送らせる行為
- ⑦送られてきた商品にクレームをつけ、返品を見せかけて別物の商品を送り返したり、商品の一部をすり替えて送り返す行為(返品詐欺)
これらの行為には詐欺罪(刑法第246条)が成立し得ます。
刑法第246条(詐欺)
人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
「欺いて」とは、相手方の財物交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることを言います。
売主側による上記のオークション詐欺の手口では、商品を受け取ることができるかどうか、正規の有名ブランド品を受け取ることができるかどうか、他に入札者がいて競争率が高いかどうか等、買主による代金の支払いや入札の判断にあたって重要な事項を偽っていますので、買主を欺いているといえます。
買主側による上記のオークション詐欺の手口では、代金の支払いを受けられるかどうか、自分が送ったとおりの商品を返品してもらえるかどうか等、売主による商品の交付や返金の判断にあたって重要な事項を偽っていますので、売主を欺いているといえます。
詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」となっています。罰金刑はありません。したがって、詐欺罪で起訴される場合には、公判請求をされ、公開の法廷で裁判を受けることになります。
なお、上記②の偽ブランド品を送る行為については、別途、有名ブランド会社の商標に類似する商標を使用し、同社の商標権を侵害する行為を行ったとして、商標法違反にもなり得ます。
オークション詐欺の事例
- 「ペニーオークション」と呼ばれるインターネットオークションにて入札手数料を騙し取ったとして、京都・大阪両府警が詐欺罪等の容疑で複数名を逮捕した事例
警察から連絡があったら
オークション詐欺では、被害者の警察に対する申告により捜査が開始することが多く、加害者の連絡先電話番号等が明らかとなっている場合には、まず、事情聴取のための出頭要請の電話が警察から来ることがあります。
警察からそのような電話が来た場合には、出頭前に、お早めに弁護士にご相談ください。取調べでどのように受け答えをするのがよいのかは事案によって大きく変わってきます。取調べで話した内容や取調べの際に署名押印した調書に係れている内容によっては、ご自身に不利になってしまいますので、警察へ出頭して取調べを受ける前に、取調べでの対応の仕方につき弁護士にアドバイスを受けるべきです。場合によっては弁護士に依頼して、出頭の際に弁護士に同行してもらうことも検討するとよいでしょう。
なお、出頭に応じるかどうかは任意ではありますが、安易に拒否してしまうと後日逮捕される可能性があります。要請を受けた出頭日に予定が入っている場合には、出頭できる候補日を自ら挙げるようにするなどし、出頭にはなるべく応じるようにしましょう。
オークション詐欺における弁護活動
まずは、被害者との示談、あるいは被害者に対する被害弁償が重要になってきます。詐欺罪は個人の財産を保護するための犯罪ですので、被害者の受けた財産的被害に対して一定程度手当ができていれば、不起訴となる可能性が高いと言えます。
しかし、オークション詐欺における被害者は、もともと相手を信頼して取引関係に入った経緯がある分、自分が騙され馬鹿にされた、カモの一人にされたといった憤りの気持ちから、加害者に対する処罰感情がとても強いことが予測されます。したがって、示談も被害弁償も、そのような被害者の気持ちに配慮しながら被害者とお話ができる、示談経験豊富な弁護士に依頼することが大切です。
逮捕され、さらに勾留されることになった場合には、検察官は大抵勾留満期の数日前までに起訴するか不起訴にするかの方針を決めますので、示談や被害弁償はそれまでにしておかなければなりません。したがって、この場合には特に示談の経験が豊富で、スピード感のある弁護士に依頼することが重要になってきます。示談の成立や被害弁償の事実が早期身柄解放につながることもあります。
オークション詐欺をしてしまったら自首のご検討を
オークション詐欺の捜査では、ある日突然、令状を持って家宅捜索に来られたり、逮捕されたりする例も見られます。お子様がいらっしゃる方など、そのような事態を避けたい方は、捜査機関からの接触がある前に、自首(刑法第42条)をすることも検討するとよいでしょう。自首は本来、刑の(任意的)減軽事由となるものですが、自らの刑事責任と向き合う意思があり、罪証隠滅や逃亡の意思がないと評価し得る行為ですので、その分、逮捕の必要性を小さくする方向へ働くからです。
刑法第42条(自首等)
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
2 告訴がなければ公訴を提起することができない罪について、告訴をすることができる者に対して自己の犯罪事実を告げ、その措置にゆだねたときも、前項と同様とする。
もっとも、自首をしたとしても逮捕されてしまう可能性はゼロになるわけではありません。したがって、自首をしたとして逮捕される可能性がどの程度あるか、自首のメリットがデメリットを上回るのかどうか等、自首案件の経験が豊富な刑事弁護士に事前に相談するのがよいでしょう。事前に相談していれば、万が一逮捕された場合にすぐに動いてくれる可能性がありますし、相談にとどまらず依頼までしていれば、自首自体に弁護士が同行してくれるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。オークション詐欺をしてしまった方、ご家族がオークション詐欺で逮捕されてしまった方は、お早めに刑事事件に強い弁護士にご相談・ご依頼ください。
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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
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