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わいせつ物頒布等罪で逮捕されたら? 弁護士が解説

刑法175条にわいせつ物頒布(はんぷ)等の罪という条文が規定されています。
なんだか古めかしい名称の罪ですが、インターネットが普及し、持ち運び容易なタブレット、スマホ等で、誰でも、またいつでもどこでも、それを操作・閲覧できる現代において、意外に身近な犯罪です。

今回は、このわいせつ物頒布等罪について、弁護士・中村勉が解説いたします。

わいせつ物頒布等罪とは

刑法175条(わいせつ物頒布等罪)
1 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
2 有償で頒布する目的で、前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した者も、同項と同様とする。

つまり、「わいせつな文書その他の物を頒布・陳列し、有償頒布の目的で所持等をすると犯罪になる」ということですが、ここでは「わいせつ」物とは何か、「頒布」とはいかなる行為を指すのかなどにつき、見ていきます。

わいせつの定義について

最判昭和26年5月10日(刑集5巻6号1026頁)は、わいせつ物を「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」と定義し、さらに、最大判昭和32年3月13日(刑集11巻3号997頁。いわゆる「チャタレイ夫人の恋人」事件判決)は、「わいせつか否かの判断は法解釈の問題であり、一般社会において行われている良識、すなわち、社会通念に従って判断すべきものである」旨判示しています。

そして、当該作品の芸術性とわいせつ性の関係については、「文書のわいせつ性の判断にあたっては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたときに、主として、読者の好色的興味にうったえるものと認められるか否かなどの諸点を検討することが必要であり、これらの事情を総合し、その時代の健全な社会通念に照らして、それが『徒らに性欲を興奮又は刺激せしめ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの』といえるか否かを決すべきである(最判昭和55年11月28日刑集34巻6号433頁。いわゆる『「四畳半襖の下張』事件判決)。」とされています。

上記のとおり、「わいせつ」とは何かという点では、結局は社会通念に従って法的に定まることになり、一義的に明確とは言えない面があることは否定できず、時代や社会によって変化することもあり得ます。

わいせつ物頒布等罪の行為

それでは、わいせつ物「頒布等」の行為とは何でしょう。上記刑法第175条1項の行為は、①頒布、②公然陳列、③電気通信による頒布とされ、また、同条2項によれば、④有償で頒布する目的での所持・保管も同項1項と同様とされています。それぞれの行為についてみていきます。

①頒布(わいせつ電磁的記録媒体頒布罪)

頒布とは、有償・無償を問わず、不特定又は多数の人に交付することです。不特定又は多数の人に交付する意思で、たまたま一人に対して交付したにとどまった場合でも、頒布に該当します。

②公然陳列(わいせつ電磁的記録媒体陳列罪)

公然陳列とは、不特定又は多数の人が認識できる状態に置くことをいいます。例えば、映画の上映、録音テープの再生、ダイヤルに録音再生機を接続し、電話をかけるだけで音声を聞けるようにすることなどがこれに当たります。そして、インターネットが普及した現在では、コンピュータ(ハードディスク)にわいせつな画像等のデータを蔵置しておき、不特定又は多数の人がインターネットを通じてアクセスできるようにすることもこの罪(電磁的記録媒体陳列罪)に当たります。

また、わいせつな画像データが保存されているウェブサイトへのリンクを勝手に貼った場合でも、わいせつ画像を不特定又は多数の人が認識できる可能性を設定したことに変わりはないので、この罪に該当すると考えられます。URLを貼り付ける際、一部を片仮名に改変したとしても「公然陳列」する行為に当たるとした最高裁判例(最高裁判例 平成24年7月9日判夕1383号154頁)もあります。

③電気通信による頒布(175条1項後段)

刑法175条1項の後段では、電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布する行為を禁止しています。
例えば、わいせつな画像データをメールやFAXで不特定又は多数の人に送信して取得させる行為や、不特定又は多数の人が、わいせつな画像データが記録されているコンピュータ(ハードディスク)にアクセスすることができるようにして、ダウンロード操作に応じて画像データを送信する(不特定又は多数の人のコンピュータ、スマホ等の媒体に記録、保存させる)行為がこれに当たります。

④所持および保管

ここでいうわいせつ物の「所持」とは、販売その他有償の頒布を目的としてわいせつ物を自己の事実上の支配下に置くことをいいます。また、わいせつな電磁的記録を保管した場合も、上記と同様に処罰の対象になります。

わいせつ物頒布等罪で逮捕されたら

もしわいせつ物頒布等の罪で逮捕されてしまったらどのように対応すべきでしょうか。まずは身柄の早期釈放を目指します。逮捕されると、大抵はまず警察の留置所場に身体拘束され、取調べを受けます。逮捕による身柄拘束は48時間以内と定められており、その間は家族であっても事実上面会できないことが多いでしょう。一方、弁護士は、仮に選任前でも、弁護人となろうとする者として被疑者と面会でき、被疑者から事情を聴取した上で今後の流れ、注意事項等を伝えることができます。

逮捕された被疑者は、その後48時間以内に検察官に送致され、被疑者の身柄を受け取った検察官は、その時から24時間以内に、被疑者につき勾留請求するか釈放するかどちらかをしなければなりません。勾留請求がなされ、裁判官が勾留を決定した場合、被疑者は、まずは10日間勾留されます。そして、検察官が勾留延長の請求をし、裁判官がこれを認める決定をした場合、最大で更に10日間の勾留延長がなされることもあります。つまり、合計最大23日間の身体拘束を受けることがあるということになります。

逮捕・勾留による身柄拘束が長期化すれば、それだけで仕事、学校等の社会生活に悪影響が生じます。できることなら早期釈放を目指し、そのための弁護活動を迅速に行ってくれる弁護士といち早く接見し、対応につき相談すべきです。そうすることにより、仮に早期釈放がかなわなくても、不起訴処分、執行猶予付き判決等の寛大な処分を求めるための適切な弁護活動を早期に開始することが可能となります。

わいせつ物頒布等罪における弁護活動

わいせつ物頒布等罪は、社会公共に対する罪とされ、強制性交等の罪など被害者が存在する事案と違い、特定の被害者を観念することができず、身に覚えがある場合でも、示談交渉が最初から不可能なこともありますが、もちろん、わいせつ画像の被写体の方などとの示談交渉が可能である場合は、その成立を目指すのは当然です。

さらに、早期釈放、不起訴処分、執行猶予付き判決等の寛大な処分を求めるため、以下のような弁護活動が考えられます(もちろん、身に覚えがない場合は、逮捕事実を否認し、自らは犯人でないとか、共犯でないことなどにつき、証拠を収集しつつ主張していくことになりますが、ここでは、身に覚えのある場合の弁護活動をみていきます)。

再犯防止のための環境構築

わいせつ物頒布等罪は、利益を追及し、営業的になされることがあります。検挙され、身柄事件となるのは、そのような場合が多いと思われます。その場合には、後に述べる贖罪寄付、示談可能であれば示談等により、その利益を吐き出した上、犯行に使用した設備、アカウント等を処分・廃止し、従業員を解雇するなどして、二度と同じ行為ができない状況を整えましょう。

その前提として、被疑者・被告人ご自身が、犯行に至る経緯や動機に思いを致し、この罪と本件犯行の社会的意味を理解して深く反省した上で、再犯を防止するための具体的な手段を提示しつつ再犯しないことを真摯に誓うことが大切です。そして、それを明らかにする反省文を作成し、これを捜査機関に提出するとともに、再犯防止策を実行に移すことが必要でしょう。弁護士は、そのための適切なアドバイスを行ないます。

贖罪寄付

贖罪寄付とは、被疑者・被告人が罪をあがなうために行う寄付のことです。被害者がいない犯罪や被害者と示談できない事情がある場合に、反省と贖罪の気持ちを表すために、弁護士会その他公益活動をしている団体に寄付するものです。示談ほどではないにしても、被疑者・被疑者の情状によい影響をもたらすことになりましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。現代ではインターネットが普及し、チャットツール、SNS等の情報伝達手段も多様化し、データをクラウド上に保存・共有できるようになるとともに、ノートパソコン、タブレット、スマホ等持ち運び容易な機器を誰もが持て、わいせつ画像等のデータを含むどんな情報もいつでもどこでも簡単に受け取ることができるようになりました。

一方で、逆に、誰もが、わいせつな画像その他の情報を簡単に入手し、あるいはこれを発信することもできるようになったということでもあります。こうしたわいせつな情報をそうと知りながら営業的に発信することがこの罪に当たるのは当然ですが、利益を追求するつもりがなくてもわいせつな情報を拡散してしまうなどすれば、思わぬ事態を招くこともあり得ます。この罪の嫌疑をかけられたら、いち早く弁護士に相談し、迅速かつ適切な対処を模索しましょう。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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