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あおり運転の定義や逮捕された場合について弁護士が解説

あおり運転とは、警音器(クラクション)を鳴らしながら前の車を追いかけたり、走行中強引に割り込んできて急ブレーキとかけたり、幅寄せしながら走行したりする等、特定の車やバイクの走行を阻害するような迷惑行為をいいます。

従前、あおり運転は死傷に繋がらない場合、単なるマナー違反として取り扱われてきましたが、2017年に起きた東名高速夫婦死亡事故を契機に、あおり運転の厳罰化を求める声が高まり、令和2年に「妨害運転罪」が創設・施行されました。よって、現在あおり運転は処罰の対象となっています。

今回は、引き続き厳しい取り締まりが考えられる、あおり運転について弁護士が解説します。

あおり運転により該当し得る罪名

妨害運転罪

妨害運転罪の要件は、他の車両等の通行を妨害する目的で以下のような行為を行なった場合に成立します。これらは一例で、明確な定義があるわけではありません。

  • 車間距離不保持
  • 急ブレーキ
  • 割り込み運転
  • 幅寄せや蛇行運転
  • 不必要なクラクション
  • 危険な車線変更
  • パッシング(不必要なハイビーム)
  • 最低速度未満での走行(蛇行運転)
  • 違法な駐停車
  • 対向車線からの接近

以上の違反行為は「道路交通法違反」にも該当しますので、妨害運転罪(あおり運転)が成立しない場合でも、道路交通法違反として処罰を受ける可能性があります。
なお、自動車同士のみならず、バイクや自転車によるあおり運転も摘発対象です。

刑罰

3年以下の懲役、または、50万円以下の罰金が科せられます。
なお、高速道路等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた場合には、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

※引用…警視庁 令和2年改正道路交通法リーフレット

器物損壊

器物損壊罪は「故意」があることで成立します。例えば、過失による物損事故の場合は、故意がなく器物損壊罪にはなりません。

器物損壊罪の「故意」は、①積極的に物を壊そうとする意思、あるいは②積極的に壊そうは思っていないが、壊れてしまうかもしれないが壊れても構わないという意思が挙げられます。これを法律用語で「未必の故意」と言います。

あおり運転中に他の車等に衝突したときは、少なくとも②未必の故意があると考えられ、器物損壊罪が成立する可能性があります。

※未必の故意…行為者が自らの行為から罪となる結果が生じることを望んでいるわけではないが、そのような結果が発生した場合でもそれで構わないとする心理状態。
詳しい記事はこちらをご覧ください

刑罰

3年以下の懲役、30万円以下の罰金、科料のいずれかです。

脅迫罪

あおり運転をしながら、「殺すぞ」「邪魔するな」「降りてこい」等の暴言で相手に恐怖感を与えた場合、妨害運転罪に加え脅迫罪が成立する可能性があります。

刑罰

2年以下の懲役、または、30万円以下の罰金が科せられます。

暴行罪・傷害罪

あおり運転で相手の車を停止させ、ドライバーに対して胸倉を掴む・殴る・蹴る・物を投げる等の暴力行為を働けば、暴行罪や傷害罪が成立する可能性があります。

刑罰

暴行罪の刑罰は、2年以下の懲役、30万円以下の罰金、拘留、科料のいずれかです。
傷害罪の刑罰は、15年以下の懲役、または、50万円以下の罰金が科せられます。

殺人罪

あおり運転をして「もしかしたら相手が死ぬかもしれないが、死んでもかまわない」等と考え、車を衝突させ、相手のドライバーや同乗者を死なせてしまった場合、殺人の「未必の故意」が認められ、殺人罪が成立する可能性があります。もし相手のドライバーや同乗者が死に至らなかった場合でも、殺人未遂が成立する可能性があります。

刑罰

殺人罪の刑罰は、死刑、無期懲役、5年以上の懲役のいずれかです。

あおり運転の行政処分

あおり運転をしたら、免許取消しの処分対象となります。

罪名 違反点数 考えられる処分
危険運転致死、殺人 62点 免許取消し(欠落期間8年)
危険運転致傷 45~55点
(相手の怪我や後遺症の程度に応じる)
免許取消し(欠落期間5~7年)
妨害を目的としたあおり運転 25点 免許取消し(欠落期間2年)
著しい交通の危険を生じさせたあおり運転 35点 免許取消し(欠落期間3年)

行政処分の前歴がない場合、違反点数が累積15点で免許取り消しとなります。よって、あおり運転で行政処分を受けた時点で免許取り消しになる可能性があります。

前歴や累積点数がある人があおり運転をした場合は、免許取り消しの欠格期間が最大5年、相手に交通の危険を生じさせた場合、免許取消しの欠格期間が最大10年になるなど、より重い処分が下されます。

あおり運転で死傷事故が生じたら

危険運転致死傷罪

あおり運転によって、相手車両に衝突する等し、ドライバーや同乗者を死傷させ、かつ以下の要件を満たした場合、危険運転致死傷罪が成立します。

  • 人または車の通行を妨害する目的があること
  • 走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人または車に著しく接近すること
  • 重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転すること

刑罰

被害者に怪我をさせたときは15年以下の懲役、死亡させた場合は1年~20年の懲役です。

過失運転致死傷罪

上記「危険運転致死傷罪」の要件に該当しない場合、過失運転致死傷罪が成立します。

刑罰

7年以下の懲役、7年以下の禁錮、100万円以下の罰金のいずれかとなります。

あおり運転の事例

実際に起きた、あおり運転の事例を一部ご紹介いたします。

東名高速夫婦死亡事故

あおり運転厳罰化の契機となった事件です。
加害者はパーキングエリアにて所定の駐車場所以外に駐停車していることを注意されたことに腹を立て、注意した相手が乗る車両の走行を妨害する迷惑行為を行ない、追越車線上で停車させました。その後、被害者に掴みかかり暴言を加えたところ、後続を走ってきた大型トラックが追突し、被害者夫婦が死亡、その子供2名が負傷しました。判決は、懲役18年となりました。

常磐道あおり運転事件

常磐自動車道にて、加害者は被害者車両を蛇行や割り込み、急ブレーキという手法で恐怖心をあおって停車させ、「殺すぞ」等と怒鳴りながら近づいて被害者を殴り1週間の怪我を負わせました。このあおり運転から暴行への一部始終は、被害者車両のドライブレコーダーに記録されていました。
加害者は保護観察付き・執行猶予4年の判決を受けました。
なお、加害者車両に同乗していた女性も、犯人隠避容疑で逮捕され、同乗者も共に厳しく罰せられています。

自転車によるあおり運転事件

桶川市内の市道にて、加害者は自転車を蛇行運転し、対向車の直前で急に飛び出すなどして交通の危険を生じさせた疑いで逮捕された事件です。通りかかった車のドライブレコーダーにその様子が録画されていたようです。
自転車も「車両」です。自転車によるあおり運転でも妨害運転罪は成立し、このように逮捕された事例もあります。

あおり運転で逮捕されたら

あおり運転の被疑者となり逮捕されたら、まずは弁護士にご相談ください。
逮捕され、身柄が拘束された場合、早期身柄解放のためのアドバイスが可能です。
最も重要な弁護活動として、被害者の方との示談交渉が挙げられます。あおり運転の被害者は怖い思いをしており、加害者側からの交渉や連絡先を知らせることを拒む方も多いので、弁護士が間に入ることで、円滑な示談成立および減刑が期待できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。あおり運転で逮捕された場合、妨害運転罪として罰せられる可能性が高く、この場合、最大5年以下の懲役、または100万円以下の罰金を科される可能性があります。更に検察官から起訴されるまでの時間には限りがあり、早急な対応が求められます。起訴された場合、99%の確率で有罪判決となります。

あおり運転として罰せられる可能性が高い例を紹介しましたが、あおり運転には明確な定義はありません。運転中についカッとなって普段とは異なる言動を起こし、結果的にあおり運転を行ったことになってしまうこともあるかもしれません。場合によっては、全国的に実名や顔写真が報道されてしまう可能性もあります。
あなたのご家族や友人など、身近な方があおり運転で逮捕されたら、弁護士にご相談ください。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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