- 被害者から声をかけられたが、走って逃げた。
- 被害者が振り返ってきて自分のことを見たので、盗撮がバレてしまったかもしれない。
- 仕掛けていたカメラを回収しに行ったら、カメラがなくなっていた。
このような事情から、自分は今後逮捕される可能性が高いか?自首した方がよいか?といったご相談を受けることがよくあります。本コラムでは、盗撮で自首をするメリットとデメリット等について弁護士・中村勉が解説いたします。
どのように盗撮事件が発覚するか
盗撮事件は、盗撮行為時に被害者に気付かれて盗撮を指摘され、駅員室に連れて行かれた上で警察を呼ばれるという流れが多いですが、その場では指摘されずに、後から被害者が警察に被害申告して発覚することもあります。目撃者の情報提供によって発覚することもあります。そのほか、別の事件で警察に携帯電話を押収された際に、その携帯電話に保存されていた盗撮のデータを警察に見られ、盗撮についても事情聴取される、ということも考えられます。
犯人が特定されていない盗撮事件の場合、警察は、被害申告等に基づき、周囲の防犯カメラ等を確認して、犯人特定のための捜査を行います。この捜査に数ヶ月かかることはまれではなく、事件から2、3ヶ月以上経ってから警察が捜索差押令状を持って家に来るということもよくあります。
盗撮の公訴時効は3年ですので(刑事訴訟法第250条2項6号)、事件から3年経過してから逮捕されたり、家宅捜索を受けたりする可能性は低いでしょう。しかし、反対に、3年を経過するまでは、不安が続くとも言い得ますので、不安で夜眠れなかったり、食事が喉を通らなかったりするようであれば、自首を検討するのもよいでしょう。もっとも、自首をするのが本当に最善の選択なのかについては、やはり、一度弁護士に相談して判断すべきです。
盗撮事件としてすでに警察から連絡がきている場合
警察から連絡がきている場合には、すでに盗撮事件の犯人ないし被疑者として目星をつけられている可能性が高く、その後に警察署に自ら出頭したとしても、法律上の「自首」には当たらないでしょう。かといって、警察からの連絡を何度も無視したり、取調べの要請を何度も断ったりすれば、逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれがあるとして、逮捕される可能性が高くなってしまうので、きちんと対応した方がよいです。
警察の取調べを受ける前に盗撮案件の経験が豊富な弁護士に相談して今後の対応方法についてアドバイスを受け、場合によっては依頼し、すぐに被害者との示談交渉に動いてもらうのがよいでしょう。被害者との間で示談が成立すれば、不起訴となる可能性も高くなります。
自首と任意出頭の違いとは
自首とは、捜査機関に対して自己の犯罪事実を自発的に申告することをいいます。
刑の任意的減刑事由にあたる法律上の「自首」(刑法第42条第1項)に該当するためには、当該申告行為を、捜査機関に対して犯罪事実が発覚する前、あるいは、犯罪事実が捜査機関に発覚していても、犯人が誰であるかが発覚する前にする必要があります。犯人が誰であるかが発覚していて、その所在だけが判明していない場合は「捜査機関に発覚する前」に含まれません。
第42条第1項
罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。
犯人が誰であるかまで捜査機関に発覚している状況で、警察署に赴き自己の犯罪事実を申告することは、法律上の「自首」ではなく、任意出頭した上での自白に過ぎません。
もっとも、だからといって任意出頭が無駄になるかといえばそうではありません。任意出頭した事実・自白した事実もなお、逮捕回避につながり得ますし、検察官が処分を判断する際に考慮する、被疑者に有利な情状の一つになります。
盗撮で自首をするメリット
逮捕や報道を回避できる可能性が高くなる
まず、皆さんがご想像され、かつ、一番期待されるメリットは「逮捕されないこと」ではないでしょうか。
たしかに、盗撮事案では、自首をして、自己の犯罪行為の責任と向き合う覚悟があり、捜査に協力する意思があることをアピールすることができれば、逮捕を回避できる可能性は高くなります。
逮捕されてしまうと、教師や公務員、医師、弁護士、大学教授、上場企業の会社員等の職に就いている方の場合には、実名報道される可能性が高いのですが、逮捕を回避できた場合には実名報道を回避できる傾向にあります。実名報道がされてしまうと、職場にも事件が知られ、懲戒処分を受ける可能性が出てきますので、そのような状況になるのを避けたい場合には自首を検討されるのがよいでしょう。
もっとも、「絶対逮捕されない」とは言い切れませんので、自首をしても逮捕される覚悟は一定程度必要です。
不安の軽減
自首をすることによって逮捕の可能性が低くなりますので、いつ逮捕されるかわからない、いつ警察が家や職場に来るかわからない、といった不安が軽減されるメリットもあります。警察が家に来た場合には、家族に知られてしまうことにもなりかねないので、ご家族と同居されている方は自首を検討された方がよいでしょう。
不起訴や減刑の可能性が高くなる
自首をした結果、被害届が提出されていたことがわかった場合や、警察の捜査により被害者が特定された場合には、不起訴に向けて、被害者と示談交渉ができる可能性が高まります。被害者との示談交渉の際に伝える本人の反省状況として自首した事実が加わると被害者に本人の反省の気持ちをより理解してもらいやすくなるため、結果、示談が成立しやすくなり、不起訴になる可能性も高くなると考えられます。
被害者が特定されなかった場合には、被害者と示談ができず、通常、略式罰金となってしまいますが、自首をしていた場合には、その点が被疑者に有利に考慮され、不起訴になる可能性も出てきます。
さらに、同種の前科前歴があったり、執行猶予中に盗撮をしてしまった場合などには、略式罰金とはならず、公判請求される可能性が高いですが、自首をしていれば、量刑の判断にあたりその点が考慮され、減刑されることがあります(刑法第42条第1項)。
盗撮で自首をするデメリット
考え得る一番大きなデメリットは、藪蛇となる可能性があることです。
すなわち、被害者による被害申告があったとしても、警察において犯人を特定することが困難であったため立件予定がなかった場合に、自首をすることで立件されるに至る可能性があります。この場合、被害者との示談等ができなかった場合には、略式罰金となり、前科がついてしまう可能性もあります。
自首をしても、特に被害者から被害申告がされていなかった場合に、以前は立件までされずに注意で終わることが通常の流れでしたが、最近では、その場合であっても警察署によっては捜査が開始され、被害者未特定のまま検察官へ送致され、示談ができない以上は略式罰金、という流れも出てくるようになりました。特に、盗撮の余罪があり、多数のデータを保存してある場合などは要注意です。
したがって、自首により自己の責任と向き合うという姿勢は再犯を防止するためにも大切ではあるのですが、お仕事との関係等で前科をどうしても避けたいというご事情がある場合には、安易に自首をお勧めすることはできないのです。
盗撮で自首するにあたっては弁護士に相談を
以上見てきたとおり、盗撮の自首にはメリットもデメリットもあります。自首をするのがよいかどうかの判断にあたっては、犯行日時、犯行場所、犯行時の状況、犯行後の状況等具体的な事案の内容の緻密な検討を要します。
具体的な事案の内容に照らし、メリット・デメリットを考慮した上、弁護士としては自首をお勧めできないケースもあります。その場合、弁護士はご相談者様が何を一番望むのか等の観点から、それでも自首をすることがご相談者様のためになるのかを一緒に考えます。
自首をして後悔することのないようにするためにも、盗撮事案の経験が豊富な弁護士にご相談ください。
自首の流れ
当事務所にご相談いただき、その後ご依頼いただいて自首する場合の一般的な流れをご説明します。
自首をするために必要な持ち物は、身分証、認め印、盗撮に使用した携帯電話や小型カメラです。身分証は本人確認のため、認め印は警察署での調書作成時に署名と共に押印も求められるためです。盗撮に使用した携帯電話や小型カメラについては、いくら盗撮行為を行った旨の申告があったとしても、警察としてはその言葉のみを真に受けて動くことはできず、通常、盗撮行為を行った証拠を要求するからです。
そのほか、盗撮の場所により、以下のものも持参していただくことがあります。
- 盗撮行為時に着用していた衣類
- 盗撮行為時に使用していた交通系ICカード
- 盗撮データが保存されているパソコン等の記録媒体
①初回相談時
具体的事案を伺い、自首をすべきかどうかを検討します。
②ご依頼後
①で自首をすべきという結論に至り、あるいは諸事情を考慮の上自首をしたい、そして、自首の際には弁護士に同行してほしいとのご意向があった場合には、委任契約を締結します。
契約締結後、必要に応じて、弁護士において自首同行時に警察署へ提出する、逮捕を回避するための意見書を準備します。意見書を準備する場合には、同意見書に添付する資料として、事件の概要や、今後捜査に協力する旨等を記載した誓約書を作成し、そちらに署名押印いただきます。
同様に、身元引受人となっていただけるご家族等がいらっしゃる場合には、弁護士においてその方とお話しの上、身元引受書を作成し、その方の署名押印をいただきます。家族はいるけれども、どうしても事件のことを知られたくないので身元引受は頼めないというようなご事情がある場合にはご相談ください。
また、ご依頼後すぐ、お仕事等のご都合や、万が一自首後逮捕された場合のこと等を考慮して、自首をする日時を決めます。最短で、ご依頼いただいた当日や翌日に行うことも可能です。
③自首同行
②の際に決めた日時に、犯行現場を管轄する警察署に自首をします。
最初は弁護士同席のもと、警察官から事件の詳細について話を聞かれます。場合によってはその後、弁護士の同席なしで一人で取調べを受ける流れになりますが、その場合でも、弁護士は警察署内で取調べが終わるまで待機していますし、その旨警察にも伝えますので、何かわからないこと、弁護士に相談したいこと等があれば、その旨警察に伝えていただければ取調べを中断してもらえ、取調室を出て弁護士にすぐ相談することが可能です。
身元引受人となるご家族等がご都合のつく場合には、自首同行の際にご家族等に一緒に来ていただくこともあります。身元引受書という書面に署名押印するにとどまらず、実際に警察署に現れて本人の身元を引き受ける意思を示することができれば、印象がよりよくなるからです。
④自首同行後
捜査の進捗を待ちます(弁護士が適宜警察に連絡を入れ、確認します)。被害者による被害申告があった場合や、被害者が特定された場合には、示談交渉等を開始し、不起訴処分を得られるよう弁護活動を行います。しばらく経っても立件されなければ、事件終結となります。
また、ご希望に応じて、性嗜好障害の治療のためのクリニックへ通院していただく等再発防止に向けて取り組んでいただきます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
盗撮は犯行場所や犯行態様が様々で、また、さらには痴漢と違いデータが残っていることが多く、さらには、昨今の検察官の処分方針等も踏まえると、自首をすべきかどうかの判断にあたっては緻密な検討を要します。
後悔のないようにするためにも、盗撮の自首については盗撮事案の経験が豊富な弁護士にご相談ください。
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当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
- 逮捕されるのだろうか
- いつ逮捕されるのだろうか
- 何日間拘束されるのだろうか
- 会社を解雇されるのだろうか
- 国家資格は剥奪されるのだろうか
- 実名報道されるのだろうか
- 家族には知られるのだろうか
- 何年くらいの刑になるのだろうか
- 不起訴にはならないのだろうか
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上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。