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特殊詐欺で逮捕されたら弁護士にご相談を

詐欺罪は古典的な犯罪類型の一つで、大昔も今も詐欺による犯罪が絶えることはありません。人を騙すという行為は人間が持っている悪徳の一つで、金銭欲からくる犯罪ですので、それに対する刑罰も軽くはありません。

特定の相手を対面で騙すのが通常の詐欺であるのに対し、電話やメール、インターネット等を用いて直接対面せずに、不特定多数の人を騙すものを「特殊詐欺」といいます。
電話などで息子や娘を装って現金を要求する「振り込め詐欺(オレオレ詐欺)」や、有料のインターネットサイトを利用したと言ってその利用料を要求する「架空請求詐欺」などが代表例です。

今回は、特殊詐欺という犯罪類型とはどのようなものか、近年横行している闇バイトはどのような刑罰を受けるのか特殊詐欺で逮捕されてしまった場合の弁護活動のポイントを代表弁護士・中村勉が解説します。

特殊詐欺とは

特殊詐欺とは、かつては「オレオレ詐欺」と言われた犯罪が、現在はその手口が巧妙かつ多様に変化したことから、より広い呼称として、一般化した犯罪類型です。この犯罪類型の被害者のほとんどが高齢者の方々です。

振り込め詐欺」は、犯人が高齢者の親族を自称して「自分が交通事故や会社で横領事件を起こした」等、虚偽の理由をつげて、その示談金などを名目に高齢者から現金等をだまし取ります。
特殊詐欺の手口も、上記と類似して、高齢者の方の銀行口座が詐欺に使われたから、キャッシュカードを預かる必要があるなどと伝え、財物をだまし取ります。

その際、キャッシュカードの暗証番号を教えるよう言われたり、紙に書いて渡したりするよう求められ、受け取った本人あるいは現場近くで待機している「出し子」と呼ばれる役割の者によって、現金が引き出されます(ちなみに、被害者の方に電話をかける役割の者を「かけ子」といい、被害者から現金やキャッシュカードを受け取る役割の者を「受け子」といいます)。

コロナ禍の特殊詐欺の態様について

ここ数年のコロナ禍で、詐欺はますます横行しています。特に「特殊詐欺」と言われる、いわゆる「振り込め詐欺」(オレオレ詐欺)は非対面でも行うことができることから、増加傾向にあります。
傷害事件などは屋外、路上に行われることが多く、お酒に酔って起こすことが多いので、外出自粛のコロナ禍においては減少傾向にありました。また、空き巣に関しても、外出自粛で家人が家にいるのでやはり減少傾向にありました。しかし、特殊詐欺は電話ひとつで非対面によって敢行することが可能なことから増加傾向にあるのです。

反面、2022年3月2日の日経新聞の報道によれば、特殊詐欺グループのトップ(ほとんどが暴力団組織です)に対し、2008年施行の改正暴力団対策法を利用し、使用者責任を問い、巨額の賠償訴訟を提起する動きも拡大しています。

特殊詐欺と闇バイト-逮捕されるまで続く恐怖

末端関与者の中には最初は詐欺と知らずに参加する者も

このように、特殊詐欺は許すことのできない犯罪ですが、一方で、受け子など末端関与者の中には最初は普通のアルバイトと思って応募し、後に特殊詐欺と気づいて組織を抜けようとしたが、幹部に脅され、暴行を受けるなどして抜けようにも抜けられず、犯行に加担してしまうケースもあります。

報道によれば、振り込め詐欺やフィッシング詐欺の犯罪組織は、指示役、かけ子、受け子など何層にも折り重なる構造で組織化されており、X(旧Twitter)などのSNSで募集した受け子をその氏名や住所等でリスト化し、いくつもの犯罪グループで共有しているということで(日経新聞2022年4月9日朝刊)、合法なアルバイトと思って応募し、運転免許証のコピーを取られてしまい、脅されて犯罪組織グループに入る者もいます。

SNS上にまん延する「裏バイト」「闇バイト」の存在

さらに近時は、SNSにて「日当10万円」「即日手渡し」「高額バイト」「闇バイト」などの、高額な報酬を餌に特殊詐欺の受け子や出し子(実行役)を募集し、特殊詐欺に加担させるケースもあります。こうしたケースで多いのは、「一回だけ」「報酬をもらったらすぐに終わらせよう」と安易に考えて応募してしまうことです。

通常、こうした闇バイトでは、面接と称して顔写真や運転免許証、親族の個人情報等を詐欺グループに送信するように求められます。そして一度でも特殊詐欺グループに受け子や出し子として加担してしまうと、逮捕されるまで抜け出すことは困難です。
詐欺グループは住居に押しかけたり、個人情報を警察に突き出すなどと脅して、二度目三度目の犯行へ加担するように指示し続け、逮捕されるまで安い報酬で搾取し続けるのです。当事務所ではそのような末端関与者を弁護しています。

かけ子・出し子・受け子はどのような罪に問われるか

これらの行為は、詐欺罪(刑法第246条)に該当します。

刑法第246条(詐欺)
1 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

もっとも、「出し子」が銀行の窓口で現金を引き出した場合には、銀行の窓口の担当者が1項の「人」に当たるため、詐欺罪に該当しますが、ATMから現金を引き出した場合は、詐欺罪ではなく、窃盗罪が成立します。

刑法第235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

なお、詐欺罪と窃盗罪の違いは、法定刑です。窃盗罪には懲役刑と罰金刑がありますが、詐欺罪には懲役刑しかありません。オレオレ詐欺などの詐欺事犯は、人を錯誤に陥らせることによって多額のお金を騙し取る、非常に悪質な犯罪であることから、その刑罰は年々、重罰化しています。また、犯行計画を立案し、実行者に指示を行う詐欺グループの幹部だけでなく、実際に電話を掛けたり、現金を受け取ったりする末端の「かけ子」、「出し子」、「受け子」にも重罰が科される傾向にあります。

詐欺に末端で協力したこれらの者にも、執行猶予の付かない実刑判決が下ることが珍しくありません。また、組織ぐるみの詐欺事犯に対し、組織犯罪処罰法が適用されれば、刑罰はさらに重くなります。しかしながら、適切な弁護活動を行うことにより、無罪を勝ち取ったり、執行猶予を獲得したりすることも可能です。
近年、福岡地裁では、詐欺については何も知らなかった、と主張する被告人には詐欺の故意はなかったとして、無罪が言い渡されました。このように、自分の知らない間に詐欺グループの一員となってしまった場合には、無罪判決が得られる可能性もあります。

直接関与していなくても犯罪になる可能性もある

「かけ子」や「出し子」などとして、詐欺に直接関与せずとも、移動型の犯罪グループに対して、アジトとなる場所や自動車等を提供した場合、幇助犯として、処罰される可能性があります(刑法第62条1項)。この場合、実行者(正犯)よりも、罪は軽くなります(刑法第63条)。

刑法第62条(幇助)
1 正犯を幇助した者は、従犯とする。
2 従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。
刑法第63条(従犯減軽)
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
なお、有期懲役の減軽は、長期及び短期の2分の1を減らすことになっているので(刑法68条3号)、10年以下の懲役を法定刑として定めた詐欺罪の場合は、5年以下の懲役となります。
刑法第68条(法律上の減軽の方法)
3 有期の懲役又は禁錮を減軽するときは、その長期及び短期の二分の一を減ずる。

もちろん、詐欺グループによって、アジトとして使われると知らずに場所を提供した場合は、故意がないため、罪に問われることはありません。

特殊詐欺の故意について

特殊詐欺事件の否認事件では、「友人にいい仕事があると言われ引き受けたところ、振り込め詐欺の受け子の仕事でした」という弁解が多いです。その仕事がどんな仕事と思っていたかによりますが、振り込め詐欺の共犯になり得ます。

犯罪が成立するためには、故意、すなわち罪を犯す意思が必要ですが、故意が認められるためには、犯罪事実の発生を確信することまでは必要なく、「自分の行っていることが犯罪かもしれないがそれでも構わない」という認識があれば足りるとされています。
ですから、「その仕事が犯罪かもしれないがそれでも構わない」と思っていたとすれば、詐欺罪が成立することになります。

そうした内心の問題は、自供のほか、その際の様々な客観的状況等により認定されますので、具体的にどのような認識があり、どういった事情により故意ありと認定されるのかという判断には法的な専門的知識・経験を必要とするので、そうした知見のある弁護士に具体的な事情をお伝えの上、ご相談ください。

特殊詐欺で逮捕されてしまったら

「かけ子」や「出し子」などの末端関与者として詐欺罪で警察に逮捕されてしまった場合、接見禁止処分となるケースが多く、勾留決定までの最大72時間以内は、弁護士以外の者との接見ができません。弁護士が取調べ時の注意事項をアドバイスしたり、今後の動きについて説明したりする必要があります。

なお、逮捕された場合の対応について、事前に詐欺グループの上層部から説明を受けている場合があります。「組織について話すな」や「組織内の情報を警察に流せば出所後に報復する」などが考えられます。これらへの対処についても、事案に応じて弁護士が適切なアドバイスをする必要があります。警察や検察に適切な供述を行うことで、不起訴処分等が得られる場合もあります。

また、詐欺事犯においては、頼んでもいない弁護士が接見にやってくることがあります。これは、詐欺グループに雇われた弁護士で、弁護活動と称して捜査状況を把握し、グループに情報提供することが目的です。必ずしも被疑者・被告人とされた者に有用な弁護活動を行うとは限りません。当然ではありますが、当事務所の弁護士は、犯罪グループとは、一切の関わりがありませんので、自らや家族等の依頼もないのに、突然、接見に訪れることは決してありません。

特殊詐欺の量刑

振り込め詐欺に代表される組織的な特殊詐欺は、昨今、重大犯罪として広く認識されており、厳しく処罰される傾向にあり、実刑が下される可能性が高いです。しかしながら、単に組織的な特殊詐欺だからというだけで、刑が重くなるわけではありません。果たした役割等が具体的に考慮され、場合によっては、執行猶予判決が下されることもあるのです。

以下で、その例をご紹介します。甲府地裁平成24年9月3日判決です。
この事例は被告人らが、共謀して、80歳以上の被害者ら3名に対し、その親族を装って現金が至急必要になったと電話をかけてうそをつき、現金合計600万円を詐取した事案です。

この事例において、裁判所は、受け子の被告人に対して、被害額は600万円と高額であるが、罪を認め反省していること、21歳と若年であり、これまで前科がなく、初めて逮捕勾留された長期間身柄拘束されたこと、被害者2名とは宥恕付きの示談が成立し、もう1名の被害者には被害金が還付されていることなどを考慮し、執行猶予判決を下しています。
この事案のように、特殊詐欺の事案であっても、その犯行において果たした役割や犯行発覚後の行動によっては、執行猶予判決が下される可能性があります。

実際、当事務所においても、被害金額が高額であり、被害件数が多いながらも、示談や今後の勤め先を確保するなど更生復帰に向けた活動が評価され、特殊詐欺という重い犯罪ながらも、執行猶予判決を獲得できた例もあります。

特殊詐欺事件の弁護活動ポイント

特殊詐欺の場合、グループによる犯行になります。単独犯ということはまずありえず、特殊詐欺グループによる犯行になりますので、当人がグループの中でどのような役割を果たしていたのかが量刑上を決める重要な要素になります。
特殊詐欺は被害金額が莫大な金額になり、とても当人一人で被害弁償できないこともありますから、できる限りの被害弁償はもちろんのことですが、特殊詐欺グループの中で当人が果たしていた役割の重要性を丁寧に検討し、なぜ当人の役割の重要性が低いといえるのかを積極的に主張することがポイントになります。

特殊詐欺と示談について

詐欺罪の被害結果のメインは金銭的被害です。ですから被害弁償が弁護活動の中心となります。しかし、詐欺罪は人の騙す犯罪ですから、実際に示談交渉してみると、精神的な被害を強く訴えられるケースが多々あります。
たとえば、実際に示談交渉した特殊詐欺被害者の高齢者の中には、「今回被害に遭って、金銭的被害に遭っただけでなく、家族や親戚からボケたのかと言われ、白い目で見られるようになったし、自分自身、ボケたのか落ち込んだ」などと被害感情を述べた方もいらっしゃいました。
そこで、被害金額全額を返金するだけでなく、できれば慰謝料もプラスし、精神的な損害を含めた被害感情を具体的に想像して真摯な気持ちで謝罪文を書くことが示談成立のポイントです。

ところで、特殊詐欺は高齢者が被害者となる場合がほとんどのため、出歩きたくないとおっしゃる方が多く、弁護士と直接面会しての示談交渉を断られるケースがよくあります。特に、新型コロナウイルス流行以来、その傾向は強くなっています。
その場合、無理に面会を求めるのはなく、まずは謝罪文を送っても構わないか聞いて、許可を得たら謝罪文を郵送して届いた頃に改めて電話するのが無難な方法です。また、被害に遭われた高齢者は、多くの場合犯人から電話で騙されているので、知らない番号からかかってきた電話に出てくれないケースがよくあります。
裁判記録には被害者の電話番号が書いてあることが多いのですが、それを見ていきなり電話するのではなく、まずは検察官経由で取次ぎをしてもらうのが無難でしょう。

示談のための返済原資の捻出ですが、特殊詐欺の被害金が犯罪組織の手元にわたってしまうと、背後の犯罪組織まで警察の手が及んだとしても、被害金が残存しているとは限らず、残存していたとしてもその所在が解明されるとは限りません。ですから、示談原資は親や親類縁者等に頼らざるを得ないです。
ただ、被害金そのものが警察に押収されたような例外的な場合には、後日、被害者に還付されることがありますし、犯人が口座から出金する前であれば、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(いわゆる「振り込め詐欺救済法」)により、口座残高を上限とした被害回復がなされることもありますので、そうした被害回復の疎明資料を作って裁判所に情状証拠として提出することは可能です。もっとも、これには時間がかかるので、一審で証拠顕出させるのは困難で、二審以降の新証拠としての提出になるでしょう。

特殊詐欺事件の弁護士費用

詐欺罪は起訴前に示談できれば不起訴もあり得ますが、示談できたとしても被害金額が大きかったり、手口が巧妙であったりすると、起訴は免れません。
そして、先ほどの述べたとおり、詐欺罪には罰金刑がなく、懲役刑しか選択肢がありませんので、起訴された場合は必ず公判請求され、正式裁判になります。さらに、裁判記録も比較的分厚いことが多く、検討に時間がかかるため、捜査段階着手金、公判段階着手金、各成功報酬などを全て合計すると最低でも150万円は見ていただければと思います。

逆に、起訴前の示談で不起訴を狙える事件の場合は、裁判の準備が不要ですので、100万円もいかないケースもあります。
したがって、ひとくちに詐欺罪と言っても事案によってその弁護士費用は大きく異なりますので、料金表を見てあれこれ悩むよりは、まずご相談いただければと思います。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は特殊詐欺について解説いたしました。SNSが身近になり、コロナ禍で外出もしづらくなった現代でも詐欺は様々な形で存在しています。

「バイトだから」「少しだけ」といった安易な考えで犯罪に手を染めてしまう若者が多いのも現状です。冒頭でもお伝えしたとおり、人を騙すという行為は人間が持っている悪徳の一つで、金銭欲からくる犯罪です。そのため、それに対する刑罰も軽くはありません。仮に少しであったとしても関わってしまった段階で警察の捜査が入る可能性があります。中村国際刑事法律事務所では、そのような事件を多く扱っています。ひとりで悩まず、まずはお電話にてご相談ください。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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