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未成年者の飲酒について弁護士が解説

「お酒は二十歳になってから」といった標語で知られるように、日本では未成年者の飲酒行為を禁止しています。これは「未成年者飲酒禁止法」(正式名称は、「二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律」)という、大正時代に施行された法律に定められたものです。

一方で、この法律には未成年者自身の飲酒行為の他、飲酒をした未成年者に同伴した者や、未成年者にお酒を提供した者についての定めがあることをご存知でしょうか。

本コラムでは、未成年者飲酒禁止法が具体的にどういう法律なのかを紐解くとともに、万が一これに違反した場合どうなるのか弁護士が解説いたします。

飲酒をした未成年者はどうなるのか

まずはじめに、未成年者の飲酒行為を禁止している規定を見てみましょう。

第1条第1項
満二十年ニ至ラサル者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス

飲酒を禁止する」とされているわけですが、違反するとどうなるのか、つまり刑罰までは書かれておらず、飲酒をした未成年者を処罰する規定が存在しないのがポイントです。つまり、たとえ未成年者が飲酒をしたとしても、当該未成年者は何ら処罰されることがないのです。

これは、未成年者飲酒禁止法の目的が、アルコールが成長期にある身体にとって危険なため、飲酒の悪影響やリスクから未成年者を守ることにあり、また、法は判断能力の低い未成年者の行為は処罰の対象とせず、それを止めなかった周囲の大人に責任を求めるというスタンスをとっているからです。後に詳しく説明しますが、法は未成年者が飲酒した場合の責任を、未成年者の育成を担うべき身近な大人に課しています。

もっとも、処罰されないからといって未成年者は好き勝手飲酒をしていいというわけではありません。酩酊している未成年者が警察に見つかれば補導されますし、親や学校等に連絡される場合もあります。また、酩酊状態で他の犯罪(暴行傷害、窃盗、わいせつ罪など)におよんだ場合は、もちろんその犯罪を理由に逮捕されることになります。お酒に酔っていたなどという方便は通用しません。

未成年者と飲酒を行った場合

先述したように、未成年者飲酒禁止法は、未成年者が飲酒をした場合の責任を大人に課しています。すなわち、未成年の飲酒を容認した大人は処罰される場合があるのです。どのような規定があるのかを見てみましょう。

第1条第2項
未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者若ハ親権者ニ代リテ之ヲ監督スル者未成年者ノ飲酒ヲ知リタルトキハ之ヲ制止スヘシ
第3条第2項
第一条第二項ノ規定ニ違反シタル者ハ科料ニ処ス

まず、「科料」(3条2項)とは1千円以上1万円未満の間で支払いを科される刑罰のことです。よく耳にする罰金刑は1万円以上の支払いを科されるものなので、科料は罰金より軽微な刑罰です。しかし、一度でも科料を科された場合、罰金刑以上の刑を科された場合と同様、前科者と扱われてしまうので注意が必要です。

次に、「親権者」(1条2項)とは文字通り親のことです。原則、父母双方が親権者にあたります(民法818条1項および3項)。たとえば、父親が可愛い我が子の成人を待ちきれず酒を酌み交わした場合、その父親は科料に処されることになるのです。

一方、「監督代行者」(1条2項)とは平たく言えば、親に代わって日常的に当該未成年者を監督すべき義務を負っている者のことをいいます。判例では以下のように示されています。

「親権者や親権代行者のように未成年者に対する監督権限や義務が法定されていなくても、親権者らが欠けたり、親権者らがいても何らかの理由で未成年者を監督できないときに、親権者に準じて一般的、包括的に未成年者を監督すべき立場にある者がこれに当たると解するべきであり、その監督権限の由来は必ずしも法律上の義務である必要はなく、親権者や親権代行者から契約等によって依頼されたり、あるいはそのような依頼がなくても事実上親権者らに代わって未成年者を手元に引き取り、同居させるなどして日常一般的、包括的にこれを監督する者などがこれに当たると解するのが相当」

これによると、たとえば、大学生の飲み会で成人した先輩が、未成年者の後輩と一晩飲酒をしたくらいでは、特段の事情がない限りその先輩が罪に問われることはありません。一方で、部活の顧問が未成年の生徒を合宿に引率するなどして、その場で生徒の飲酒を容認した場合、その顧問が罪に問われる可能性は高くなってくるでしょう。

未成年者に酒類を売った場合

未成年者飲酒禁止法は、親権者(または監督代行者)だけではなく、未成年者にお酒を販売・提供した者に対しても責任を課しています。次はその規定を見てみましょう。

第1条第3項
営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満二十年ニ至ラサル者ノ飲用ニ供スルコトヲ知リテ酒類ヲ販売又ハ供与スルコトヲ得ス
第3条第1項
第一条第三項ノ規定ニ違反シタル者ハ五十万円以下ノ罰金ニ処ス

これら規定の対象となりうるのは、お酒を取り扱うコンビニやスーパー、飲食店等の店員です。親権者や監督代行者と異なり、違反すると科料よりも重い刑罰である罰金刑が科されることになるので、お酒を販売、提供する業に従事する人は特に注意が必要です。罰金刑を定めた3条1項には「未成年者自身が飲酒することを知りながら」とありますが、これには未必的な認識(もしかしたら未成年自身が飲酒するかもしれない、という認識)も含まれます。

実際にお酒を販売・提供する場において未成年者自身が飲酒をするか否か、その真意を推し量るのが困難な場合も多々あるでしょう。しかし、そういった状況でお酒を販売・提供してしまうと、その従業員には未必的な認識があったとして、処罰されてしまう可能性があるのです。接客業において、お客さんの要望を断るのは容易くないでしょうが、飲酒するのが大人であると確信が持てない時は、販売・提供しない方が結果的に無難といえます。実際、コンビニ等において、おつかいで来た未成年者に対しても一律お酒の販売を断るのはこのためです。

未成年者と知らなかった場合

それでは、未成年者自身が飲酒することを知らなかったのではなく、目の前にいるお客さんが未成年者だと知らなかった場合はどうでしょうか。結論から言うと、本当に知らなかったという主張が認められれば、処罰されることはありません。しかし、いかなる場合においてもこの主張が通るわけではありません。なぜなら次のような規定があるからです。

第1条第4項
営業者ニシテ其ノ業態上酒類ヲ販売又ハ供与スル者ハ満二十年ニ至ラザル者ノ飲酒ノ防止ニ資スル為年齢ノ確認其ノ他ノ必要ナル措置ヲ講ズルモノトス

これは、年齢確認等といった未成年者の飲酒防止措置を、お酒の販売者・提供者に義務付けるものです。この規定があるため、この措置を講じないお酒の販売者・提供者には未必的な認識が推認されやすくなります。すなわち「もしかしたら未成年かもしれないと思ったのではないか」と疑われやすいということです。

従って、販売者・提供者側は、身分証の提示を求めるなど徹底した年齢確認をし、「未成年ではない」と確信を持てるほどの義務を尽くし、その記録を証拠として残すことが重要でしょう。

酒を提供した店舗の経営母体(会社、個人事業者等)側の責任はどうなるのか

これについては、次のような規定があります。

第4条
法人ノ代表者又ハ法人若ハ人ノ代理人、使用人其ノ他ノ従業者ガ其ノ法人又ハ人ノ業務ニ関シ前条第一項ノ違反行為ヲ為シタルトキハ行為者ヲ罰スルノ外其ノ法人又ハ人ニ対シ同項ノ刑ヲ科ス

ここにある「前条1項」とは、先述した3条1項のことです。つまり、コンビニやスーパー、居酒屋の従業員が「未成年者自身が飲酒することを知りながら、未成年者に酒類を販売・供与した」場合、従業員と同様の罰金刑を店舗の経営母体が受けることになるのです。これを、法律用語で両罰規定と言います。

民法改正に伴う異同

最近、成人年齢の規定(民法4条)が改正され、成人年齢は20歳から18歳に引き下げられました。
しかし、飲酒や煙草等については、改正法施行後もなお20歳になるまで禁止とされるので、上で解説してきた未成年者飲酒禁止法の適用は変わりません。注意してください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。成長著しい20歳未満の青少年は、心身にアルコールの影響を強く受けやすく、健全な発育に支障をきたすことがあります。未成年者飲酒禁止法はこれを防ぐべく、このような規定を設けているのです。お酒は20歳になってから、20歳からでも十分に楽しめます。身の回りで飲酒をしようとする未成年者がいたら、その人のためにも積極的に制止するようにしましょう。

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