SNSの普及によって、児童ポルノ関連の犯罪が増加しています。昨今、性犯罪に対する厳罰化や児童に対する性的搾取を防止しようという流れから、児童のポルノに対する取り締まりが厳しくなっています。
児童ポルノの容疑をかけられた場合、多くの人が今後の不安を抱えるでしょう。しかし、適切な法的アドバイスを受け、迅速に対応することで、逮捕を回避できたり、刑罰を軽減できたりする可能性があります。
今回は、児童ポルノに関してどういった行為が犯罪となるのか、警察から児童ポルノに関する嫌疑をかけられてしまった場合にどう対処すべき等について、代表弁護士・中村勉が解説いたします。
児童ポルノ禁止法違反とは
まず、児童ポルノについては、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(以下、単に「法」といいます)によって規制されています。まずは、条文から確認しましょう。法第2条では、以下のとおり規定されています。
法第2条3項
「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
1 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
2 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
3 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部をいう。)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
平たく言うと、児童ポルノとは、児童のわいせつな画像や動画がこれにあたります。もっとも、実際「児童ポルノ」にあたるかは、個別具体的に判断せざるを得ません。ですので、自分のダウンロードした画像等が「児童ポルノ」にあたり警察からの捜査対象となるのではないかと少しでも不安になられた方は、弁護士に相談されるのがよいでしょう。
児童ポルノの「児童」とは
「児童」とは、18歳に満たない者をいいます(法第2条1項)。
児童ポルノは、相手が18歳未満であることを知っていた場合に成立します。
例えば相手が年齢を偽るなどして18歳未満であることを知らなかった場合、児童ポルノは成立しません。ただ、このような認識は、未必の故意で足りるとされています。つまり、正確には18歳未満とは知らなくても「もしかしたら18歳未満かもしれない、18歳未満でもまあいいや」という場合でも認識ありとされるのです。この認識は四周の状況から総合的に判断されます。
ですから、見た目などから18歳未満かもしれないと思った場合、児童ポルノが成立する可能性があります。相手の年齢を聞いていなければ大丈夫というわけではありませんし、「18歳だと聞いていた」とか、「18歳未満は使えないアプリで知り合った」、「会員サイトに18歳以上との記載があった」というだけで通用しないことも少なくありません。
児童ポルノ禁止法違反で問題となる行為
「児童ポルノ」に関連して問題となる罪としては、主に所持、保管、提供、陳列、製造が考えられます。「製造」は逮捕事案になりやすい類型です。以下では、それぞれを解説いたします。
児童ポルノの所持・保管
まずは、条文から確認しましょう。法第7条1項では、以下のとおり規定されています。
前段部分が「所持罪」を定義しており、後段部分に「保管罪」が定義されています。
法第7条1項
自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者(自己の意思に基づいて所持するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者(自己の意思に基づいて保管するに至った者であり、かつ、当該者であることが明らかに認められる者に限る。)も、同様とする。
法律からも明らかなように、単にインターネット上で児童ポルノを数枚ダウンロードした場合であっても、児童ポルノ単純所持罪が成立する可能性があります。昨今、SNSの発達もあり、インターネット上の児童ポルノに対する規制が厳しくなっています。軽い気持ちで、数枚ダウンロードした場合でも、ダウンロードサイトの摘発を契機に、捜査が及ぶ可能性も十分に考えられるでしょう。
保管の定義
児童ポルノ単純所持罪と同様に、自己の性的好奇心を満たす目的や自己の意思に基づいて保管するに至った者であることなどの要件が必要となります。
一方で、所持罪と保管罪との間には、記録媒体を所持したのか、記録そのものを保管したのかという点に違いがあります。
電磁的記録とは、情報のことを指し、データそのものを意味します。そのため、写真や書籍などの有体物ではなく、画像や動画などのデータそのものをダウンロードしたような場合に保管罪が成立します。物は「所持」、データは「保管」といったように、所持と保管が区別されているといえるでしょう。
他にも自己の性的好奇心を満たす目的を超えて、不特定若しくは多数人に提供する目的または公然と陳列した場合や、その目的で所持等した場合(法第7条6項、7項)は、より重い処罰が予定されています。
児童ポルノの提供
法第7条2項では、以下のとおり、規定されています。
法第7条2項
児童ポルノを提供した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を提供した者も、同様とする。
児童ポルノのデータをインターネット上にアップしたり、第三者にそのデータを販売したりした場合に、児童ポルノの提供の罪に当たる可能性があります。児童ポルノの提供の罪の場合、単に児童ポルノを所持するよりも重い処罰が予定されていることに注意が必要でしょう。こちらの罪も、ダウンロードサイト、児童ポルノの購入者や製造者等が摘発されるのを契機として、捜査が及ぶことが多いでしょう。
所持罪や保管罪が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」に対し、提供罪は「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」と重い処罰が科されています。
児童ポルノの製造
児童ポルノ製造罪については、法第7条3項から5項、7項前段において規定されています。
法第7条3項
前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も同項と同様とする。同項に掲げる行為の目的で、同項の電磁的記録を保管した者も、同様とする。
4項
前項に規定するもののほか、児童に第2条第3項各号のいずれかに掲げる姿態をとらせ、これを写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
5項
前2項に規定するもののほか、ひそかに第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を写真、電磁的記録に係る記録媒体その他の物に描写することにより、当該児童に係る児童ポルノを製造した者も、第2項と同様とする。
7項前段
前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造…した者も、同項と同様とする。
自身が児童の姿態を撮影した場合(5項)のみならず、児童自身に姿態を写真撮影させ、その画像や動画を送らせた場合(4項)にも、児童ポルノの製造にあたる可能性があります。これらの罪もダウンロードサイトの摘発や被害児童の保護者や家族からの通報によって、捜査が開始されることが多いといえます。また、児童買春にともなって敢行されるケースもとても多いです。さらに不特定または多数人に提供する目的、公然と陳列する目的で製造した場合には、以下に述べる陳列罪に問われます。
児童ポルノの陳列罪
児童ポルノの陳列罪については、法第7条6項において規定されています。
法第7条6項
児童ポルノを不特定若しくは多数の者に提供し、又は公然と陳列した者は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。電気通信回線を通じて第2条第3項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録その他の記録を不特定又は多数の者に提供した者も、同様とする。
「陳列」とは、不特定または多数の者が認識できる状態に置くことをいいます。
そのため、児童ポルノ画像が記録された写真やDVDなどの物を配る場合や、そのような写真や映像のデータを誰もが閲覧できるインターネットの掲示板に投稿した場合などが陳列罪に当たります。
ひとたびSNSなどのインターネット上に児童ポルノを陳列してしまうと、この世から完全に消し去ることは非常に難しくなります。罰則も「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」と定められており、被害児童の被害が続いていくことによる権利侵害の深刻さを考慮して、特定の第三者に提供する場合よりも重い処罰がなされるでしょう。
児童ポルノで逮捕された場合にはどうなるか
児童ポルノは、年少者を被害者にするので、成人に対する痴漢や盗撮よりも逮捕率は高いです。個人的法益というより、児童を守るという社会的法益に対する侵害という面も大きく、このような犯罪に対しては、警察や検察庁は厳しく対応します。
児童ポルノで逮捕されると、まずは警察の取り調べを受けることになるでしょう。逮捕後の48時間以内に検察庁に送致された場合、検察官は送致を受けてから24時間以内に勾留するかどうかの決定をしなければならないので、最初の72時間が、長期に身柄拘束となるか否かにとって重要です。当事務所の取り扱い事例で言うならば、複数の被害児童がいる場合や同一児童に対する複数回の犯行に関しては逮捕の可能性が高いです。
児童ポルノ事件で弁護士に依頼するメリット
刑事事件にはさまざまな段階があり、それぞれに弁護活動が可能です。刑事事件の流れは事件が発覚した時から始まりますが、事件発覚前に弁護士を雇うメリットや事件発覚後に刑事事件の流れがどう進んでいくかを解説します。
警察に事件が発覚していない場合
まずは、警察に事件が発覚していない場合には、自首をすることが考えられます。児童ポルノ製造事件の場合、逮捕されてしまう可能性も十分に考えられます。また、逮捕の前に、警察が令状をもって突然自宅を捜索に来る可能性があります。しかしながら、自首をすれば、逮捕される可能性が低くなりますし、仮に逮捕されたとしても勾留は回避できる可能性が高まるでしょう。
当事務所の事例では、4件の同種の児童ポルノが敢行された事例で、自首によって何とか逮捕を免れ、在宅捜査にしてもらったケースもあります。さらに自首の際、証拠を任意に提出することで、突然警察が家に来ることを防ぐことができる可能性もあります。ですので、警察がいつ家に来るか不安だという方は、自首をされることをお勧めいたします。
警察に事件が発覚している場合
次に、警察に事件が発覚している場合には、早急に示談をし、更生の可能性を示していくことが必要になるでしょう。特に児童ポルノ製造に関する事件の場合には、被害児童の両親を相手に示談することになり、被害感情は峻烈なことが多いので、慎重かつ被害感情に寄り添った示談交渉が必要となります。ですので、児童ポルノ製造に関する事件の示談交渉を依頼される場合には、同種の事件について経験豊富な弁護士に依頼されるのがよいでしょう。
一方で、児童ポルノ製造に関する事件は、社会法益に対する罪でもありますから、単に被害者側との間で示談をするだけでは、不起訴にならないこともあります。ですので、こちらからも積極的に更生の可能性などについて示していく必要があります。例えば、児童に対する性的嗜好が窺われるような方の場合には、専門クリニックに通院し、治療を行っていくなど具体的な再犯防止対策を行っていくべきでしょう。
児童ポルノ禁止法違反での解決事例
当事務所で取り扱った児童ポルノ事案をご紹介します。
まとめ
児童ポルノ禁止法違反は、児童を守るために厳しい法律が設けられています。
もし捜査や逮捕の可能性がある場合でも、適切な対応を取れば、逮捕を回避したり、その後の処分を軽減できる可能性があります。早い段階で弁護士に相談することによって最善の道を一緒に模索することができます。自首を考える場合や示談交渉を進める場合には刑事事件に精通した弁護士のサポートが必要です。
児童ポルノに関する問題は一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
未来を前向きに考えるために、今、できることを一緒に見つけましょう。
今すぐ無料相談のお電話を
当事務所は、刑事事件関連の法律相談を年間3000件ものペースで受け付けており、警察捜査の流れ、被疑者特定に至る過程、捜査手法、強制捜査着手のタイミング、あるいは起訴不起訴の判断基準や判断要素についても理解し、判決予測も可能です。
- 逮捕されるのだろうか
- いつ逮捕されるのだろうか
- 何日間拘束されるのだろうか
- 会社を解雇されるのだろうか
- 国家資格は剥奪されるのだろうか
- 実名報道されるのだろうか
- 家族には知られるのだろうか
- 何年くらいの刑になるのだろうか
- 不起訴にはならないのだろうか
- 前科はついてしまうのだろうか
上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
